味と味覚  味覚とは

 
味 覚とは、生理学的な理論を除けば、甘み、塩味、酸味、辛味、苦味、渋味、うま味、が基本的な味覚といわれています。食物を口に含んだ時に、人はこの味覚を 分析して味を感じるといわれています。この数年、九州大学で開発された、味覚センサーを食品の分析に利用する機会が多いと思いますが、それぞれの基本の味 覚を単一化して電気抵抗を測定した、幼稚な機器で味覚判定能力は幼児以下のレベルです。ただ、グラフ化して出ている事で説明がしやすいことと、機械が測定 することによる客観性が評価できるだけです。  しかしながら、人間の味覚はそんな に 単純でしょうか?甘みひとつを取っても千差万別の甘みがあります。では人間はこの様な無限大の味覚をどのようにして判別するのでしょうか?人は口に含んで 感じた味覚を味覚のパターンとして記憶するのですが、必ずその味覚とそのときの自身がおかれている環境の何かと関連付けて記憶しています。ですから、何か を口に含んだときに以前に記憶のある味だと思うと、そのときの記憶を呼び戻し、そこからどこの店のどの製品の味に近いとか表現するのです。フレーバリスト やソムリエのように職業的にパーツを記憶している方もいますが、一般人は過去の記憶に頼ります。この様に味覚と経験は大変密接に関連しており、経験が少な いことは味覚の発達にも影響が出ています。子供のころから好きなものしか食べない、スナック菓子のような味付けの強いものを常食してきた人が大人になった ときにその方の味覚は非常に偏ったものになってしまいます。つまり味覚と関連したファクターが少なく偏っていることになるわけです。

 では、どのようにして このファクターを増やしたらよいのでしょうか?子供を育てる過程で幼少期は手作りと家族そろって食事をすることで、季節ごとの食材を使用した多品種の食事 を家族で一緒に摂ることが子供の情操教育と味覚に育成に役立ちます。又、小学生高学年のころよりは、基本の味覚が出来上がりますので、同じ食物でもいろい ろなレベルの物を経験することで更なる味覚の向上が図れます。よくピンからキリまでといいますが、食物でも同様のことが言えます。例えば、牛肉の味に関し て言うと、輸入牛肉、国産牛肉、黒毛和牛と同じ牛肉でも、牛の品種、飼料、育て方で大きく違います。同じしゃぶしゃぶでもいろいろなランクの肉で食べてみ ることで肉の違いが判るようになります。ピンとキリを知ることで、正しい評価をすることが出来ます。又、食物の味覚はトータルの評価のように見えますが、 その味覚を左右するものがあります。それは脂質(油)の違いです。

 黒 毛和牛と国産牛の違いは脂身の質の違いです。霜降りの黒毛和牛がおいしいのは脂身の質と量の多さに起因しています。両方の肉の赤身だけを比較するとさほど の違いはありません。黒毛和牛の脂身で国産牛を食べてみますとほとんど国産牛とは判らないと思います。無論赤身には独特の味がありますが、赤身の味を堪能 したければ赤身専門の短角牛のほうが独特の味があります。又、最近脱脂乳が市場に並んでいますが、なれないと独特の味で飲みにくいものですが、その脱脂乳 に良質の生クリームを規定量添加すると普通の牛乳の味になります。マグロでも赤身に腹身の油を混ぜるとトロの味になるように脂質がおいしさの要になってい ます。フライドチキン、ハンバーガー、ポテトチップス等子供の好む味は脂質がメインの味になっています。

 素 材の味を経験するには、季節の旬の食物を食べることです。旬の素材をいろいろな料理方法で食べることで、味覚は形成されていきます。手作りの料理を経験す ることで、加工食品の味が判るようになります。この様においしさの評価は個々人において異なります。同じ食品を食べたとしてもおいしさの種類と評価は分か れるはずです。過去においては多くの方がおいしいという物はありましたが、現代では必ずしもそうとは言い切れません。これは20年位前までは日本人の食物 はそれほど大きな違いがなく、大多数が同様の経験をしてきました。しかし現代人の食生活は多種にわたり、マスコミや、食の評論家や有名人がおいしいと言う と、おいしいと思うような状況です。ぜひご自身の舌を鍛えて、自分なりの評価をしてみてください。

 笑 い話ですが、10年ぐらい前にラーメンブームが華やかなころ、当時有名な職人が、究極のラーメンとして「きせんラーメン」の店を出したことがあります。き せんとは単蒸留の機械を指し、名前のとおり蒸留水に茹で上げた麺を入れただけのものでした。麺質を味わうということでは考えは理解できますが、一般人が ラーメンとして期待するスープがないのですから、さすがにマスコミは引き、評価されないまま店を閉めてしまいました。この様にマスコミもさすがにヨイショ できなかったのだと思います。また、業務用のラーメンスープ大手の富士食品の方に昔聞いたのですが、麺屋武蔵のスープはバランスと言い、塩分濃度と言い、 魚介の臭いと言い、食べられたものではないとのこと、この様に昨今のグルメブームでマスコミは話題性だけを取り上げて記事にしますので、店のオーナーも味 のバランスよりマスコミ受けする素材を取り上げてしまう傾向があります。この様な場合にも、ご自身の味覚に自信があれば正しい評価が出来ます。



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